駐車禁止場所に駐車していた時の事故の過失割合について。ー前回投稿の追加。

前回の上記事案についての追記。
こちらは駐車違反のところに駐車、相手は路外の駐車場から進入とのこと。しかも現場は先の道路はすぐに行き止まりで、この道を使うのはその先の5軒程度の住民のみで、車の往来はほぼないとのこと。
この状況を相手の保険会社の担当、それと自分のところの保険会社にも電話して聞いてみたという。
双方に10%の修正が妥当と言われたとのこと。
果たしてそうなのだろうか。
判例タイムス【157】の修正要素は、本来100:0の事案を駐停車した被害車両にも「法の規制(法44条,45条)に反して車両を駐停車させることによって、他の交通の妨害をし,事故発生の危険を高めている点を考慮する。」というものである。
この駐車違反の場所に駐車していた車が、これから路外駐車場から道路に侵入しようとしている車に対して「事故発生の危険を高めている」といえるのだろうか。
事故現場まで走行してきているわけでもなく、当然、後方をスピードを出して追走している車があるわけでもない。
つまり相手車がこの事故の回避行動をとるに際して、さらなる事故の拡大の危険や他の事故を誘発する危険等は何もない状況である。
ということは、この事故の発生の要因は相手の運転ミス、判断ミス、に因るものと判断できる。
このケースに対して、駐停車禁止場所の修正10%を適用するというのは如何なものか。
そもそもこの修正は主に道路を走行してきた加害車両について想定しているものではないのか。

「別冊判例タイムス 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」の冒頭「はしがき」にも、
「もっとも,本書記載の基本の過失相殺率は,各基準表に記載した典型的な事案を前提としたものにすぎず、実際の事件においては,個々の事故態様に応じた柔軟な解決が望まれる。本書を利用する際には、各事故態様の個別性を踏まえ,基準化された基本の過失相殺率とその修正要素の背景にある考え方を適切に応用していくことが、民事交通事件の適切な解決に不可欠なものであり,過失相殺率の認定基準の画一的な運用は避けるべきである。
とある。
今回の保険会社の判断は、この「画一的な運用」になってはいないか。

と、ここまで少々否定的なことを書いてしまいましたが、保険会社の事故を担当している方々は、もめごとに介入していくというプレッシャーの中で、
非常にご苦労して日々事故を解決していただいていることは承知しているし、尊敬もしています。
また、毎日何十件も様々な形態の事故に対応していて、その知識も判断も適格だということも承知しているつもりです。

ただ、当事者としては全てを保険会社任せにしないで、納得しない判断には、弁護士等法律の専門家にも確認してみてもいいのかな、とは思っています。
ただし、法律的な根拠もなしに保険会社に自己の気持ち、判断を主張することは言語道断だと思います。

【追加情報】
相談者からその後の経過および結果の連絡があった。
回答させていただいたとおり、判例タイムスの該当ケースの運用について自分の保険会社の担当者に問い合わせたという。
しかしながら、当初の見解を繰り返されたとのこと。修正要素の説明を確認してくれと指摘した後も。
上席に確認してくれと言った後の回答でも同じだったという。(本当に確認しているかは不明であるが。)
相談者は粘って、最後は顧問弁護士に確認してくれ、と食い下がったらしい。
その結果、顧問弁護士の見解は100:0。相談者に10%の過失を求めることはこのケースでは妥当ではないというものだったという。

このケースは保険会社の担当者が判例を正しく理解していないで運用していることから起こったことだと思う。
多くの担当者は正しく運用してくれているものだと思っているが、全てではないのも事実。
当然ではあるが、担当者には20年目のベテランもいれば、今年入社した新人もいる。担当者にも実力差はあるということ。
新人も先輩にある程度は聞けるが、何回も同じことは聞けない。そうなると自分で判断することになる。
しかしながら実力がない段階で読んでも、必ずしも正しい判断ができるとは限らない。
往々にしてあるのが、その形態の事故が判例として採用されている主旨や説明文などの主旨を読み取らないで、文字、単語に引っ張られすぎてしまうこと。今回もそのケース。

契約者側ができる予防策としては、やはりよくわかった担当者がいる代理店を選ぶことだと思う。
保険会社がこう言っている、だとか、こちらの見方になってくれようとしてくれる代理店でも、ただ保険会社に大声で文句を言うだけの代理店ではダメ。
ちゃんと根拠を示して説明してくれる代理店を選ぶことだと思う。
通販などで保険会社との間に入ってくれる人がいない場合は、ちょっときついが、常識で考えておかしいと思ったことは、常識的に保険会社の担当者にそう判断する理由を聞いてみよう。その上で、自分で調べるか、弁護士が区役所、市役所などで行っている無料相談会などで聞いてみる、とかしてみるといいと思う。大声出して詰め寄る事だけは避けた方がいいと思う。









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